この旅一番の目的!
僕はまだ道路っぱたに座りこんで2回目のパンクを直していた。…この旅…制覇できないかも…リタイヤかぁ…そんな『マイナス』の考えが頭の中をぐるぐると巡っていた…とそんな時…
『プップーーッ!』
車のクラクションが聞こえた。振り返ってみると走り過ぎていく車の運転手がこっちに向かって『ガッツポーズ』をしているのがみえた。
『頑張れよっ!』
そう言ってくれているように思えた。
『おうっ!頑張るよ!っ』
そう思いながら僕は危うくポロリ『涙』がくるところだった…2回目のパンク修理はスムーズに終わり。ようやく『再スタート』が切れる。
…行ける所まで行こう…
僕は自転車に股がり、またペダルを踏み始めた。時間は既に17時をまわり、太陽も もう沈みかけていた。それでも進む先には山が見えていて『これでもかっ!』と言うぐらい伊豆半島が伊豆 半島らしさを見せ付けてきた…
…行ける!でも絶対行ける!…
僕は自分を鼓舞し続けながら、山を登る…
「おりゃーッ!」
「うぉりゃーッ!」
そしてその山を登り切ったあたりで、偶然にもこの旅で一番訪れたかった場所に到着した。
「うぉーッ!あったーっ!『旅人岬』ぃーっ!」
僕は事前に伊豆半島をWEBで調べていた時にこの『旅人岬』を知った。でもあまり大きな岬でもないようで、情報も少なく正確にどこにあるか場所が掴めていなかった 。でも…
『旅人岬でゆに子の写真を撮りたいっ!』
と思い、それがこの旅の一番の目的となった。
「ここにあったかぁ『旅人岬』っ!できれば昼間に到着したかったなぁ」
と思いながらも『夜じゃないだけまだまし』と太陽が沈みきる前に写真を撮りまくっ た。
「いいねーぇ!」(カシャ!) 「旅人岬!」(カシャ!)
なんとなく…これで僕も旅人の仲間入りが出来たような気がした…嬉しかった…
限界よろしく
『旅人岬』で旅人の仲間入りを果たし、僕は先を急いでいた。
「こりゃいよいよヤバいぞ…」
太陽が本当に沈みきり辺りは真っ暗。この旅初日に熱海で夜間走行を経験したけど 、西伊豆の暗さたら半端無かった。まず『灯り』が一切無い!熱海の時は十分とは言えないものの、まだポツリポツリあ った。でも西伊豆は一切無いんです。だから自転車のライトがあっても直前しか照らせないから意味がない。しかも幸か不 幸か『旅人岬』を過ぎてからの道は下り坂。疲れはしないものの…
「あぶねっ!あぶねぇーっ!」
大袈裟じゃなく『この先、右に曲がるのか左に曲がるのかがわからない』ぐらい暗い 中での下り坂走行は『暗い山道を1人=怖い』を忘れてしまうぐらいのスリル。
「ちょっとでも判断が遅れたら…突っ込むなぁ…」
本当にそんな恐怖感を持ちながらのダウンヒルでした。そして1つの山を下り切った所で小さな街に到着。
「何処だここ…なんてとこ?」
街と言っても結構暗い。『この先はどうだ…?』灯りはろくに見えない…
「どうしよう…先に行くか…ここで泊まるか…」
安全面を考えれば『泊まり』だけど、泊まればその分だけ『制覇できないリスク』が 高くなる…ただでさえ今ここが何処か分からないのに…と真剣に考えていた時『キャツ』が襲いかかって来た…
『グゥゥゥゥゥ』
『空腹』です。なんだろう?今の今までは一切そんな気配が無かったのに…。でもこ の日は確かにティハールでネパールカレーを食べてから何も食べていなかった…
「うわっうわっうわわわ…」
緊張の糸が切れたのか、怒涛の空腹攻撃に襲われ、僕は立っている事も出来ずにその 場に座りこんでしまう。
「やべぇ本気で立てねぇ」
ここまで来ると、もう『選択肢』が無い…
…ここに泊まるしかねぇ…
しかも周りにお店らしきものが無い中では『野宿』という選択肢も無くなっていた…
「食い物…食い物…」
本当に限界で宿を探すにも動く事が出来なかった…ただ頭を上げて見るとスグ目の前 に宿の看板があった…
#6つの露天風呂が楽しめる
#ペンションマリンビュー
#0559-92-××××
#坂登ってスグ
物乞い
「ペンションマリンビューです」 それは、おばあちゃんの声だった。
「すいません。今晩の宿探してるんですけど…空いてますか?」
「えーっと…素泊まりですか?」
「ハイ…」
…まずは泊まる事が先決…
「空いてますよ。何時頃到着されます?」
「もう坂の下なのでスグ行けます…」
「じゃあお待ちしてますね」
『寝床確保っ!!後は食料だ』なんて思いながら坂を上がって行こうとしたのですがガ ス欠で力入らず全然登れない。『おいおいおいおい…』自分で自分を疑っちゃうぐらい力が入らないのです。少し登っては座り込み、また登 っては座り込むの繰り返しでした。
「『坂登ってスグ』ってか坂がなげぇ!」
実際はさほど長くないんだろうけど…『やっとの思い』でマリンビューに到着。
「ふぅ…着いた…」
でもまだ中には入れない。僕は入口前のベンチに腰をおろし石廊崎で買った『海老煎餅』と『爽健美茶』でエネルギー補給を試みた。
「回復しねぇなぁ…でもチェックインなら行けるか…」
僕は酒も飲んでいないのに『千鳥足』で宿の中に入った…
「すみませ~ん」
「………は~い」
奥からさっきの電話のおばあちゃんであろう人が現れた…
「さっき電話した者何ですけど…」
「あーはいはい。ちょっと待って下さいね…えーっと『素泊まり』で良かったですよ ね…?」
…あっ…早くもこの時が来てしまった…
「すいません…大変申し訳ないんですけど…何か食べ物いただけないですか?ご飯だけでもいいんですけど…」
完全なる『物乞い』…
「え”っ?」
突然のお願いにおばあちゃんは驚いた様子だった…
「ここまで自転車で来て途中コンビニとか全然無くて何も食べる物が無いんです…」
「えっ!?ここまで自転車なの!?」
「はい…で下で電話してから上がって来るのもガス欠でフラフラで…全然上がれなく て…」
「あぁだから時間がかかってたんですねぇなんか遅いなぁと思っててねぇ…ちょっと 待ってね…」
おばあちゃんが奥へ引っ込むと少しして女将さん(?)であろう女性と2人で出てきた 。
「ここまで自転車で来られたんですかぁ!あらまー…あっ良いですよ大したものない ですけど…」
「本当ですか!?ありがとうございますっ!!」僕は深々と頭をさげた…
ペンションマリンビュー
「じゃあちょっと荷物取ってきます」
荷物を持って中に戻るとおばあちゃんが待っていてくれた。
「お兄さんでっかい荷物しょってるねぇ。それ背負って…自転車で…」
「そうなんですよ…テントとか全部背負ってるんで…凄く重いんです。ちょっと待っ てみます?」
僕は『俺こんな重い荷物背負って走ってんだよ』ってアピールしたかったんだろうな …
「じゃあちょっ…うわ!こりゃ持ち上がんないよ!おばさん腰悪くしちゃうよー」
おばあちゃんの一言を聞いて『少し間違えば…』と反省した…まだまだ子供ですみません…その後おばあちゃんの案内で2階の部屋に通された。
「うわっ!すげぇ!」
初日・2日目とテント泊の僕には十分過ぎるツインルーム。しかも部屋の中はいい匂 い。
「ご飯が出来たら電話鳴らしますからね」
「わかりました。有り難うございます!」
おばあちゃんは部屋を出て行った。と同時に僕はベッドにダイブ!
「ふえぇ~疲れた…」
…ところで…ここ何処?…すぐに携帯で『ペンションマリンビュー』を検索…その結果。今は静岡県の戸田(へだ)って所にいる事とここから自宅までは200km ある事がわかった…こりゃ明日死ぬぞ…過去1日最長走行距離は平坦な道で180km。でも明日はあの『箱根峠』ありの200km。登り坂を考慮して平均時速10kmとすると20時間も必要だった…
…明日は5時発だな…
そして走りへの負担を減らすべく荷物は最初に見つけたコンビニで送る事に決めた。
『プルルル!プルルル!プルルル!』
「おわっ!びっくりした」
突然部屋の電話が鳴った…ご飯が出来た合図だった。僕は階段を降りてフロントまで行くと、食事が用意されたお盆があった。
「普段はこう言う事やらないからこんなモンだけど…」
そんな女将さんの言葉とは逆に、お盆には、ご飯にコロッケ、パスタにサラダ、デザ ートのプリンまで付いていた。
「全然こんなモンじゃないじゃないですか!」
しかもお盆を持って2階に戻ろうとした時におばあちゃんが『バターロール』を3つ ビニール袋に入れて僕に渡してくれた…
「今日みたいにお腹すいちゃうと駄目だから…持っていきな…」
涙がちょちょ切れるかと思った…
「本当にすみません。有難うございます!」
マリンビューの食事も最高だった…