2007年9月21日(金)あれ買わなくちゃ。

出発日前日。

普段であれば昼間の外回り中にたまった事務処理系の仕事を終えて帰宅するのだが、この日ばかりは終業時間と同時に会社を出た。

理由はただ1つ『旅の支度』である。

勿論前日まで何も準備をしていない訳ではない。むしろ準備は9割以上終わっていた。ただ今回の旅で一番重要なモノがまだ揃っていなかったのだ。今回の旅で一番重要な物…

それは『テント』である。

『自転車の旅も第3弾』なのに…

輝かしき第1弾は2006年9月

『寝袋』と共に茨城を旅した。

その時は公園のベンチと芝生の上で就寝。最初は寝袋にくるまって寝たものの、あまりの暑さに耐えきれず、結局は寝袋を使わず寝た。『夏だから風邪はひかない』というのもあった。

ただその代償に…尋常じゃないくらい『蚊』に刺されまくった。

続く第2弾は同年11月に房総半島を一周した

その時は11月という時期的な事もあり『体調を崩すといけない』との判断から野宿ではなく『安宿泊』と決めた。

旅で体調を崩す事も旅の一部と思うが、サラリーマンである以上、旅で会社休んで体調を崩してまた会社を休む事は許されない。だから安宿泊をした…でもその結果凄く『爽やかな旅』となった。

実際『房総半島一周』で僕は『自転車旅行』の虜になったのだが、ほんの少しだけ物足りなさを感じていた。それは『男の旅はやっぱり野宿』的な普通の人には理解し難いであろう僕なりの『男のロマン』がそこにあった。

だから今回の旅は『テント野宿』と決めテントを購入した。

自転車1台分 2007年09月22日(土)

出発当日の朝を迎えた。前夜は遠足前の小さな子供のように興奮して寝付けなかった…というのは無く『気付いたら起きていた』と言うぐらいぐっすり寝る事が出来た。しかも寝坊もしていない。

いつものようにシャワーを浴び、顔を洗い、歯を磨き、体重計にのる『なるほどね…帰って来たらどうなってるかな』そんな楽しみも持ちながら最終荷物チェック。

「おしっ!忘れ物無しっ!まぁ昨日の夜も寝る前チェックしたからなそりゃそーだ」

なんて独り言も冴え始める…ちなみにこんな事を言っておきながら、今回の旅行で大事なキンカンも虫よけスプレーも忘れて後で痛い目にあった…

そして最後にTシャツとサイクリングパンツとヘルメットを身にまとい旅の準備が整った。

「おしっ!行こうっ!」

勢い良くリュックを背負おうとした…『重っ!!』気合い無しでは持ち上げられない重さだった。バックを背負い再び体重計にのってみる…『えーっ!?』なんとさっき確認した体重に『+12kg』。僕の自転車が『11kg』だから自転車1台分の重さと言う事になる。

後日談になるが3日目の宿泊地でおばちゃんとこんなやりとがあった。

「お兄さん、でっかい荷物しょってるねぇ~」
「そうなんですよ、テントとか全部背負ってるんで…ちょっと持ってみます?」
「ちょっ…うわ!こりゃ持ち上がんないよー!おばさん腰悪くしちゃうよー」

それぐらいの重さだった…でも余計な荷物は一つとしてない。僕は改めて気合いを入れ家を出た。

やっぱ帰ろうかなぁ…

『伊豆半島一周自の旅』が始まった。初日の目的地は『静岡県熱海市』(距離にして約130km)。熱海まではまず環状8号線でセレブの街二子玉川まで行きそこから国道246号線で厚木市方面へ向かう。

「二子玉川までは草野球の試合でよく行くから余裕だな」
なんて考えていたが甘かっ た。よく行くのは車であって自転車となるとまるで勝手が違う『これ車じゃなきゃ駄目だろ』的な道が多く、自転車に乗っている僕はやむなく脇道にそれる。そして住宅地に迷い込み戻れなくなる…
「またかよ…」
同じ事を何回と繰り返す。なんとも学習能力がない…と言うか…東京の住宅地は本当に迷路のように複雑すぎると思う。

そして国道246号…これがまた最悪の道だった。

この道は東京⇔神奈川を結ぶ主要道路の1つであるため車道自体は確かに広いのだが、交通量も非常に多い為、12kgの荷物を背負いながらの走行は非常に危険で、歩道を走らなければならない。

だが歩道は逆に狭く荒れている。しかも途中の横浜市は『○○台』という地名が多く地形的にも平坦でないため、狭くて荒れてる上にアップダウンがあり凄く走りづらく疲れるのである。

そして極めつけ付けはこの道路がめちゃくちゃ長いくせに、目に入る景色がいつもと変わらずで一言で言えば『退屈』なんです…だからそんな国道246号はみるみる僕からモチベーションを奪い、遂にはこんな事を思わせた…

「やっぱ帰ろうかなぁ…まだ戻る方が近いし…」
自転車をこぎだして約3時間。早々の挫折であった…

僕と海

走りづらい国道246号と『帰ろうかな』という壮絶な心の格闘を経てなんとか厚木市までたどり着いた。ここからは国道129号に乗り換え平塚市を目指す。いや正確には平塚市ではなく『湘南の海』を目指す。

僕は25歳の夏に沖縄で生涯初の海水浴を体験した。あまりの海水の塩辛さに衝撃を受け、後にも先にも海で泳いだのはその1回限り。そして今だに海で泳ぎたいという衝動にはかられない。ただ僕は『海を見る事』が異常に好きらしい。海の無い群馬県生まれのせいなのか、海を見ると気分が高揚して『力』が湧いてくる。

国道246号を走り抜けられたのも『次の国道129号を抜ければ湘南の海が見れる』そんな思いがあったからかもしれない。そして自宅を出てから約7時間、遂に『湘南の海』とご対面「………」大袈裟かもしれないが最初は言葉がでなかった…。そしてその後、心の底から沸き上がってくる感情とパワー…
「うーっ!みーーーっ!」
最高だった。湘南の海はサーフィンはもちろん砂浜ではビーチバレー、J2湘南ベルマーレの旗が立て掛けてあったりと格好いい。そして何より若い。今回も力を貰った「伊豆半島一周やってやる!」これでモチベーションの充電完了。気を引き締めてここ湘南から熱海を目指す。

ただ…何もしないくせに海を見すぎて、この時点で予定より3時間も遅れていた。