Happiness only real when shared

映画『Into The Wild』をご存知でしょうか?

裕福な家庭に生まれ、順風満帆な未来を捨ててアラスカの大自然へと旅立った青年の実話を描いた作品です。

彼は旅の果てに命を落としてしまいますが、その死の間際に日記へと残した言葉があります。

Happiness only real when shared(幸せは分かち合ってこそ本物)

この一文は、映画のラストで主人公の魂のように浮かび上がります。日本語に訳すと「分かち合ってこそ幸せ」。たった一言ですが、人生における大切な真理を鋭く突いています。

僕も一人旅に憧れを抱いていました。

自由気ままにどこまでも行けるというのは、ある種の贅沢です。実際、愛車のSUVとロードバイクを積み込み、時には車中泊、時にはテントを張って、自然の中に身を置きながら旅をしてきました。

誰にも縛られない。起きる時間も、走る道も、立ち寄る店も、すべてが自分次第。

誰にも気を遣わず、ただただ風と太陽のリズムに身を委ねる旅は、それはそれで本当に素晴らしい体験でした。

朝焼けに染まる山頂の景色。

ふと立ち寄った魚市場で出会った、信じられないくらい新鮮な刺身。

ロードバイクで汗を流した先に待っていた天然温泉。

旅の一つ一つが、忘れられない“宝物”になりました。

でも、です。

どれだけ感動的な風景を見ても、どれだけ美味しいものを食べても、心の奥にはいつもわずかな寂しさがありました。

「この感動、誰かと共有できたらもっと素敵なのに」

「この笑いを、誰かと一緒に味わえたら、もっと記憶に残るのに」

一人旅は自由だけど、“共鳴”がないんですよね。感情の波を誰かと重ねられない。

その瞬間に生まれる幸せを「分かち合う」相手がいないことで、どうしてもその幸福が完成しきらない感じがするのです。

そんなとき、ふと『Into The Wild』のラストシーンを思い出しました。

「分かち合ってこそ幸せ」──ああ、これか、と。

もちろん一人で旅をすることにも意味があります。

孤独の中でしか見えない景色や、自分の“芯”に気づく瞬間もある。

でも、それを終えたときに初めて、人と過ごす時間のあたたかさや、誰かと感情を共有することの尊さに気づくんです。

嬉しかったことも、ちょっとしたトラブルも、誰かと「同じ記憶」として持てること。

それは、人生を豊かにする一番シンプルで、でも一番強力なエッセンスなのかもしれません。