出会いは一目惚れ
最初にCinelliに惹かれたのは、紛れもなくそのデザインだった。街中でふと見かけた一台の鮮やかなロードバイク。その流麗なフォルム、独特のカラーリング、そして何よりもフレームに輝く「Cinelli」のロゴに、私の目は釘付けになった。それはまさに一目惚れだった。
Unicaとbootleg Hobo
それから数年後、念願叶って私のガレージには二台のCinelliが鎮座することになった。一台は鮮やかなイエローが目を引くロードバイク、「Unica」。もう一台は、深みのあるカーキ色が武骨な魅力を放つランドナー、「bootleg hobo」だ。
Unicaを手に入れたのは2006年のこと。
長年憧れ続けたイタリアの至宝が、ついに自分のものになった時の喜びは、今でも鮮明に覚えている。まるで長年の恋人を射止めたかのような、そんなハンパない喜びだった。
Unicaとの最初の大きな冒険は、房総半島一周の旅だった。どこまでも続く海岸線、緑豊かな山々、そして潮の香りが混じる風。ペダルを漕ぐたびに景色が変わり、Unicaは私の身体の一部となって、その美しさを共に感じさせてくれた。特に印象に残っているのは、九十九里浜にある月の砂漠記念公園だ。広大な砂浜にポツンと佇むモニュメント。そこでUnicaと二人で撮った写真は、今でも大切な宝物だ。
伊豆半島一周の旅では、美しい海岸線とアップダウンの激しい道が私たちを迎えてくれた。最南端の石廊崎で食べたカツ丼の味は格別だった。そして、今となっては笑い話だが、戸田という小さな港町でハンガーノックになり、旅館に助けを求めたというアクシデントもあった。あの時の旅館の方の優しさと、温かいお茶の味は忘れられない。Unicaがいなければ、あのような貴重な経験もできなかっただろう。
Bootleg Hoboを手に入れたのは2018年
bootleg hoboとの旅は、また違った趣があった。数日間の荷物を積み込み、目指すは遥か遠くの伊勢神宮。妻の安産祈願という大切な目的を胸に、私たちはペダルを漕ぎ続けた。3泊4日の道のりは決して楽ではなかったが、hoboの安定感とタフさが、私を力強く支えてくれた。
早朝の静寂の中、鳥のさえずりを聞きながら峠を越え、地元の人との温かい触れ合いに心癒され、そしてついに辿り着いた伊勢神宮の荘厳な佇まい。その達成感は、言葉では言い表せないほど大きかった。妻の無事を祈り、清々しい気持ちで家路についた。
Unicaとhobo。 デザインも用途も全く異なるこの二台のCinelliは、私にとって単なる移動手段ではない。共に風を感じ、景色を共有し、困難を乗り越えてきた、かけがえのない相棒なのだ。もしかしたら、この愛情は他人には理解されにくいかもしれない。高価な趣味だと揶揄されることもあるだろう。
それでも、私は胸を張って言える。
Cinelliとの旅は、私に「男のロマン」と、何にも代えがたい達成感を与えてくれた。それは、日々の生活に彩りを与え、困難に立ち向かう勇気をくれる、私にとっての宝物なのだ。これからも私は、この愛すべきCinelliたちと共に、まだ見ぬ景色を探しに行くだろう。そして、その旅の記憶は、私の人生を豊かに彩ってくれると信じている。
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